解剖する人はいるの?

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 警察庁と厚生労働省のまとめによると、05年の交通事故関係を除く変死体数は14万8475体で全死者の14%にあたる。変死体は、警察官らが検視し、犯罪性があると判断されれば、刑事訴訟法に基づいて司法解剖される。ほかの死因不明遺体は、知事の判断による行政解剖や、遺族の了承を得ての承諾解剖が行える。05年の司法解剖は4942体、行政・承諾解剖は8628体で総解剖数は1万3570体だった。

変死の解剖、わずか9%…犯罪・欠陥事故見逃しの恐れ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)


 法医学教室の○○とか、監察医○○といった2時間ドラマが流行っているわりには、実情はこのようなものでしかないということでしょうか。

以下は、2年ほど前に書いてものですが、それほど変わっていないということでしょう。人的リソースすら危ういと、なにもしようがないということあります。

 わが国では、司法解剖はあまりなされないようです。千葉県だと、年間約7000体の異常死体のうち、司法解剖されるのは160体、行政解剖が20体ほどだそうです。欧米だと、7000体の異常死体だと、2000体くらいは法医解剖されるそうです。この原因は、リソースの不足だそうです。法医学者の絶対数が少ないことがまずあり、次に予算がないことです。解剖経費は、一体につき20万以上かかるのに、国からはその三分の一程度も補助されないそうです。

 法律上は、異常死については、綿密に死因を調査して特定しなければならず、捜査機関がその窓口となって解剖の実施をすべきなのでしょう。しかし、インフラ、リソースの不足がこれを妨げているようです。

 なお、厚労省は、司法承諾解剖(仮称)を制度化して、死因特定をはかるようなことを提案しているようです。ただ、この解剖では、専門医、病理医、法医学医が共働しておこなう必要がある仕組みが提案されており、大きな大学病院でもなかなか実施困難なもののようです。

 解剖しない死因の特定は、現状では、その正確性に問題があるとの報告もあるそうです。

けったいな刑法学者の戯れ言

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このページは、Tetusya Ishiiが2007年5月17日 17:22に書いたブログ記事です。

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