国際環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」(GP)=東京都新宿区西新宿8=のメンバーら2人が今年4月、調査捕鯨船「日新丸」の乗組員が自宅に送ろうとした鯨肉を配送途中で持ち出した疑いが強まり、青森県警は20日にも、窃盗などの容疑で逮捕する方針を固めた。
GPは会見を開き、鯨肉の入手方法について「巨大な横領行為を明らかにするにはこの方法しかなかった」と主張。そのうえで「自分の利益のために持ち出したわけではないので違法性はないと考えているが、捜査には協力する。(窃盗容疑で)捜査対象になることもある程度覚悟している」などと話していた。
グリーンピース:鯨肉窃盗でメンバー逮捕へ…宅配抜き取り - 毎日jp(毎日新聞)
窃盗罪における不法領得の意思の内容として、権利者排除意思と利用処分意思が必要とされています。利用処分意思というのは、よく「経済的用法に従って」利用処分する意思だといわれてきたので、証拠品として確保する意思は、経済的用法に従って利用処分する意思ではないということなのでしょうか。
しかし、利用処分意思は、厳密に経済的用法に従う利用処分である必要がないことは、性的興奮を目的として下着泥棒を想起すれば、わかることです。実際の裁判例でも、財物からなんらかの利益を享受する意思くらいのものとしてとらえうるものが多くあります。
目的が正当だからとか、証拠品としてだから、経済的用法に従っていないというアドバイスを、もし本当に弁護士がしていたのなら(たぶんそうではないでしょうが)、個人的にはかなり疑問に思います。昔の判例の抽象的命題を振り回しているだけでしかないでしょう。
また、鯨肉が入っているという心証が十分にあっても、確実にそれを認識してはいないので、完全に証拠を確保するという意思だったわけでないでしょう(これを確認するために奪取したわけですから)。