Feindstrafrechtとしての共謀罪

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 最近のわが国の刑事立法は、基本的な政策路線でいうと、敵対的刑法(Feindstrafrecht)で一貫しているといえるのです。犯罪者の厳罰化の要求、少年法の改正、法定刑の引き上げ、性犯罪者のトレーシングetc.こういったものには賛成だけど、共謀罪だけは反対というのは、本質的なところがきちんと理解されていないか、ポリシーがないか、たんなる評論家にすぎないか、よくわかりませんが、ご都合主義という印象はぬぐえません。

 立法政策で、みえているところ(要件など)だけをあれこれ議論して、その導入の是非を論じるというのは、本筋ではないはずです。それは導入が是となったときのあり方の問題でしかないので、導入の是非の議論では些末なことで、決定的な批判にはなりえないのです。アメリカ法的な法学方法に追随するにしても、RICO法における共謀罪と通常の共謀罪をその導入過程から比較検討して、要件の相違などを分析するとかして、わが国のあり方を検討してもよさそうです。
 濫用の可能性といっても、現行法規でも濫用しようと思えばいくらでも可能なのであって、例えば、駐車場の他人のスペースで活動しただけでも、住居侵入にしたくらいですから。こういうのを是認してきた人たちが、あえて共謀罪にだけを反対するのはもっと解せないです。

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続・けったいな刑法学者のメモ - 共謀罪その後 (2005年7月29日 08:25)

ということは、アメリカ法における共謀罪を比較法的に検討する際も、伝統的な共謀罪との関係をみるのは不十分であり、むしろRICO法における共謀罪の規制を検討することが必要です。..... 続きを読む

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Jakobsは、Feindstrafrechtのルーツの一つとしていわゆるDuchesne-Paragraph(ドイツ刑法30条2項)を挙げています。同条項は共謀的意思形成を処罰しようとするもので(Wessels/Beulke,AT Rn.564)、共謀罪と共通の思想に基づくものです。消極的一般予防論や特別予防論に基づく刑罰理論はそれと親和的です。それは刑罰ではなく保安処分的性格の強いものになっていきます。

 この話は、たぬき先生の邦訳にありませんでしたか?
 一般予防論の人たちにきいたら、予防効果は実証しなくてよいし、できないのは応報刑論と同じといっていました(代表:M@W大、その他、K大関係者)。だったら、絶対的応報刑論と五十歩百歩で、応報刑論を批判できないことになるのでは、と思いました。

ヒロシです(浜田山小学校の吉田先生からそう呼ばれていました)。予防効果があるから正当化できるというのが一般予防論なのに、実証する必要はないというM@W大君達の考え方は全く理解できんとです。応報刑論は、効果は不要といっているのですから、実証する必要はなかとです。

四国巡礼の旅の効果はいかがでしたか。私は火曜日からBonnに来ています。Feindstrafrechtについてスペイン人で実質的にJakobsの弟子のCancio Meliaの論文がZStWの2005 Heft 2に出ています。間もなくブログで要約して紹介するつもりです。コンピュータ・インターネット犯罪の関係の最近の論文もいくつか調べてアップしておきました。なにか必要なものがありましたらご連絡下さい。

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