2006年3月アーカイブ

 最高裁判所平成17年(あ)第2091号平成18年3月27日第一小法廷決定において、裁判所は、道路上で停車中の自動車後部のトランク内に被害者を監禁した行為と、同車に後方から走行してきた自動車が追突した交通事故により生じた被害者の死亡との間に因果関係があるとの判断を示しました。
 事実関係は、告人は、2名と共謀の上、午前3時40分頃、普通乗用自動車後部のトランク内に被害者を押し込み、トランクカバーを閉めて脱出不能にし同車を発進走行させた後、呼び出した知人らと合流するため、幅員約7.5メートルの片側1車線のほぼ直線の見通しのよい道路上に停車させていたところ、停車して数分後、後方から走行してきた自動車の運転手が前方不注意のため、停車中の車に気づかず、真後ろからその後部に追突し、トランク内の被害者がそれにより傷害を負い、死亡したというものです。これに対して、

被害者の死亡原因が直接的には追突事故を起こした第三者の甚だしい過失行為にあるとしても,道路上で停車中の普通乗用自動車後部のトランク内に被害者を監禁した本件監禁行為と被害者の死亡との間の因果関係を肯定することができる。

と、判示しました。

 裁判所ウェブサイトが、サイトのリニューアルに際して、http://www.courts.go.jp/outline.htmlというページで、次のように記載しました。

3. リンク設定
当サイトへのリンク設定は,原則として自由です。ただし,次の点にご留意ください。
  • リンク設定をする場合には,裁判所と特定の関係があると誤解を受けるような何らかのコメントを付加しないでください。
  • 裁判所ウェブサイトのトップページ(http://www.courts.go.jp/)へリンクを設定する場合を除き,裁判所ウェブサイトへのリンクであることを明記してください。
  • リンク設定をした場合には,次の連絡先に電話で御連絡ください。
    • 裁判所ウェブサイト内のコーナー及び最高裁判所ウェブサイト
      最高裁判所事務総局広報課 電話 03(3264)8111(内線3156)
    • そのほかの下級裁判所ウェブサイト
      それぞれの裁判所総務課

 そこで、まじめな方々は、電話連絡をされたようです。例えば、「最高裁にtelしてみた」「最高裁判所が電話してというので電話した」など。これらの方々は、http://www.courts.go.jp/というサイトのページにリンクを設定されたみたいです。

モデルチェンジ

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 なにかと評判の悪い最高裁のHPの模様替えですが、まだ古いデータベースはいきているようです。
今日の追加は、監獄法46条2項と憲法21条、14条1項に関するものです。なんとなく、iMac(intel)とiMac(PowerPC)を併売しているアップルみたいですね。といったら、怒られるか。m(_ _)m

 ところで、旧データベースへリンクを張った場合も連絡が必要なのでしょうか?

 旧五菱会の事件で、資金洗浄したとして、組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿の罪)に問われた人に無罪の判決が出ました。 #とりあえず、日経の記事

 まず、犯罪収益等とは、組織犯罪法2条に定義されています。

2 この法律において「犯罪収益」とは、次に掲げる財産をいう。
 一 財産上の不正な利益を得る目的で犯した別表に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばこれらの罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により生じ、若しくは当該犯罪行為により得た財産又は当該犯罪行為の報酬として得た財産
 二 次に掲げる罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならばイ、ロ又はニに掲げる罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により提供された資金
  イ 覚せい剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)第四十一条の十(覚せい剤原料の輸入等に係る資金等の提供等)の罪
  ロ 売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第十三条(資金等の提供)の罪
  ハ 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)第三十一条の十三(資金等の提供)の罪
  ニ サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第七条(資金等の提供)の罪
 三 不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十一条第一項の違反行為に係る同法第十四条第一項第七号(外国公務員等に対する不正の利益の供与等)の罪の犯罪行為(日本国外でした行為であって、当該行為が日本国内において行われたとしたならば、当該罪に当たり、かつ、当該行為地の法令により罪に当たるものを含む。)により供与された財産
 四 公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金の提供等の処罰に関する法律(平成十四年法律第六十七号)第二条(資金提供)に規定する罪に係る資金
3 この法律において「犯罪収益に由来する財産」とは、犯罪収益の果実として得た財産、犯罪収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他犯罪収益の保有又は処分に基づき得た財産をいう。
4 この法律において「犯罪収益等」とは、犯罪収益、犯罪収益に由来する財産又はこれらの財産とこれらの財産以外の財産とが混和した財産をいう。

このように定義された犯罪収益等の取得もしくは処分につき事実の仮装をし、または犯罪収益等を隠匿する行為、および、犯罪収益等の発生原因につき事実を仮装する行為が同法10条において処罰されています。報道から推察すると、被告人には、犯罪収益等であることの認識があったとはいえないとして、無罪とされたようです。

法に関する過大な期待

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 どうも。

けったいな刑法学者さんには、コンピュータ技術に関して過大な期待があるように思える。

と、酔狂人の異説さんにいわれてしまいました。でも、私はコンピュータ技術で何とかしろなどといった覚えはないし、そんなことできるとも思っていないし、と、当惑するばかりです。刃物はどんどん切れ味鋭くしてもらってかまわないです。ようは、使い方を間違わなければいいんです。で、変な使い方をして、人に迷惑をかけたり、傷つけたりしたら、それなりの責任をとってもらわないといけないだけです。

 むしろ疑問なのは、

コンピュータは刃物のようなものである。刃物をうかつに扱えば他人や自分を傷つける。だからといって、他人や自分を傷つけないように切れなくすれば刃物としての用をなさなくなる。コンピュータを切れない刃物にすればいいというのは、使い物にならなくすればいいと言っているに等しい。遠回りのようでも、リテラシーを高めていく以外に本質的な改善は望めない。

という言葉を裏返せば、なんか法に過大な期待か、あるいは、極端な見方があるようにに思います。

続々・作成罪はいらいない?

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 「続・作成罪はいらいない その2」を書かれて、さらに議論をすすめられたようなので、こちらもさらにすすめます。
 その前に、余談から。偽造罪って「にせもの」を作ることなのは確かなのですが、「にせもの」っていろいろ考えることができます。現行刑法は、名義の真正性に対する信頼を保護するものとして偽造罪をおいており、その意味で、名義の真正性を偽ること=有形偽造の処罰を原則としています。内容の真実性を偽ること=無形偽造は、とくにその信頼を保護すべき場合にかぎって、例外的に処罰しているにすぎません。この点で、作成名義を偽ったものを「にせもの」というのがこれまでの話だったといえます。なお、電磁的記録不正作出罪になりますと、有形偽造だけでなく、無形偽造も処罰されると解するのが多数説です(公文書と公電磁的記録の整合性が主な理由です)。
 話を不正指令電磁的記録に関する罪にもどしますと、高木さんと法案(ないし立法者)との相違点は、信頼の対象が異なっていることにあり、

「プログラムの動作に対する信頼」と、「プログラムを供用されることに対する信頼」とは別であり、「プログラムを供用されることに対する信頼」が求められているのだと考えます。

ということから、それが「作成罪」不要とされる考えに結びつけられています。

 待望の刑法総論がでました。σ(^_^)がこのような道を選ぶ契機を与えてくださった先生といえます。学部三年の時のゼミで、あなたの報告は99%よかったけれど、最後の1%が全部を台無しにした、といわれたことは、いまだに夢に見ます。

# まえがきには、決断がつかないときは、in dubio pro Hiranoとされてきたとのことですが、σ(^_^)の場合は、in dubio contra Soneだったかもしれません((((((^_^;) ススッ

 かなり読み応えがある本です。自認されているように、共犯論はモノグラフ集になっています。なお、Winnyをダウンロードできるようにした者については、概括的幇助犯が成立すると書いてあります。通説からいくとそうなるだろうということは、以前簡単書いたとおりです。

続・「作成罪」はいらない?

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 この法案の問題点が浮き上がってきそうなのですが、私の誤解か、高木さんの誤解か、あるいは、そこが論点なのか、確認したいことがあります。

(1) 論点1および論点2に関連して

 その前に、これは、ここだけでなく、全般的に使われている表現なのですが、

コンピュータプログラムの不正な作成を罪とすること

を問題視されています。ただ、法案は、不正なコンピュータプログラムの作成を罪とするものなのです。「不正」の意味は、ひとまずおくとして、「コンピュータプログラムの不正な作成」と「不正なコンピュータプログラムの作成」というのは同じなのでしょうか。偽造罪との対比がわかりやすいということで、若干ミスリーディングだったのかもしれませんが、不正電磁的記録作成罪では、「不正な電磁的記録」の作成が処罰の対象であるという理解をすべきではないかと思います。解釈した結果、電磁的記録の不正な作成と同義だ、ということはあるかもしれませんが、議論の前提としては区別しておきます。

 上記タイトルは、別にクレジットカードの偽造にかぎるわけでなく、「通貨偽造罪」に「偽造罪」はいらない、「文書偽造罪」に「偽造罪」はいらない、「電磁的記録不正作出罪」はいらない、といいかえても、いいのです。「『不正指令電磁的記録に関する罪』に『作成罪』はいらないのではないか」というエントリでは、「作者に責任がある」という短絡的思考が看取され、あるいは、

作成者と供用者が申し合わせて行為に及んでいるなら、それは共謀共同正犯になるし、作成者が供用者のことを知らなくとも、誰かが行為に及ぶだろうと考えながらプログラムを作成したならば、作成者の行為は幇助にあたるのではないか。

として、供用罪の共犯による処罰でカバーされるから、作成罪はいらないとされています。

# 作成者が供用者のことを知らなくとも、誰かが行為におよぶだろうということをよく従犯の故意として、こういった場面で用いられたりしていますが、きわめて誤解を生む表現であるか、あるいは、誤解している表現です。Winnyを例にあげていますが、おそらくWinnyのケースでもそのような漠然としたものを故意としているわけではないはずです。強力な時限爆弾を銀座四丁目の交番に仕掛けて交差点周辺の人々を殺害する場合と同程度の内容はあったとみているはずです。

## ついでに、

幇助で起訴するとなると作成者の意図を立証する必要があり、それが難しいから……ということは理解できる。しかし、今回の刑法改正案でも、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」と限定しているのだから、作成罪に問う場合はいずれにせよ、「人の電子計算機における実行の用に供する目的」という意図があったことを立証しなくてはならない。

意図、目的、故意は、概念的に異なります。事実上、重なり合うことがあるというのと、概念の異同は一応区別されます。また、意図の立証が難しいから、このような立法になったわけではないです。

 民事の判断ですから、かならずしも刑法とは結びつかないかもしれません。

A高校の第2試合の開始直前ころには,本件運動広場の南西方向の上空には黒く固まった暗雲が立ち込め,雷鳴が聞こえ,雲の間で放電が起きるのが目撃されていたというのである。そうすると,上記雷鳴が大きな音ではなかったとしても,同校サッカー部の引率者兼監督であったB教諭としては,上記時点ころまでには落雷事故発生の危険が迫っていることを具体的に予見することが可能であったというべきであり,また,予見すべき注意義務を怠ったものというべきである。このことは,たとえ平均的なスポーツ指導者において,落雷事故発生の危険性の認識が薄く,雨がやみ,空が明るくなり,雷鳴が遠のくにつれ,落雷事故発生の危険性は減弱するとの認識が一般的なものであったとしても左右されるものではない。なぜなら,上記のような認識は,平成8年までに多く存在していた落雷事故を予防するための注意に関する本件各記載等の内容と相いれないものであり,当時の科学的知見に反するものであって,その指導監督に従って行動する生徒を保護すべきクラブ活動の担当教諭の注意義務を免れさせる事情とはなり得ないからである。

 国民保険料に関する大法廷判決がでました。憲法84条の租税法律主義の趣旨はおよぶものの、旭川市の条例の違憲性は否定したというものですが、通常の租税でも、大枠は法律で決められているものの、具体的な算定になると、通達集とにらめっこしないとわからなかったりしますから、これを違憲にしたら、国税関係の法律が全部違憲になるだろうと、素人的に思っていたので、探しに行ったら、刑事法の判例もでていました。

 一つめは、刑訴法402条の不利益変更の禁止に関する刑の重さの判断に関するもの。第1審判決は「被告人を懲役1年6月及び罰金7000円に処する。その罰金を完納することができないときは,金7000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。」で、控訴審は、破棄自判(刑訴法397条2項)により、「被告人を懲役1年2月及び罰金1万円に処する。その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間,被告人を労役場に留置する。」との判決をしたというもの。これについて、

 第1審判決と原判決の自判部分は,いずれも懲役刑と罰金刑を刑法48条1項によって併科したものであるが,原判決が刑訴法402条にいう「原判決の刑より重い刑」を言い渡したものであるかどうかを判断する上では,各判決の主文を全体として総合的に考慮するのが相当である。そして,原判決の刑は,第1審判決の刑に比較し,罰金刑の額が3000円多くされた上労役場留置期間の換算方法も被告人に不利に変えられ,その結果労役場留置期間が1日長くされているが,他方で懲役刑の刑期は4か月短くされているのであるから,これらを総合的に考慮すれば,実質上被告人に不利益とはいえず,上記の「原判決の刑より重い刑」に当たらないことは明らかというべきである。

 併合罪加重における罰金の併科(刑法48条1項)をするとき、懲役刑と罰金刑それぞれ個別に刑の軽重を判断するのではなく、全体として総合的に判断するというもので、宣告刑が懲役刑と罰金刑の統合されたものとみるならば、このようになるのが一貫しているのでしょう。併合罪加重が単純加算方式なら、個別にみていくことになるのでしょうが、現行刑法はこのような立場とみる(罪数論がいらなくなる)のは困難でしょう。

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