2006年11月アーカイブ

通帳に対する詐欺

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違法な目的を秘して口座を開設したことが、銀行に対する詐欺罪(通帳・カード)を構成するか?

奥村弁護士の見解 - 通帳詐欺の論点

 今週の授業で扱う予定。最初の判例は、通帳の財物性を判示したにすぎないですが、この問題の本質は、欺罔行為の有無にあると思います。判例・通説のいう「本当のことを知ったら、財物・利益を移転しなかっただろう」という公式があまりに粗雑で、理論的根拠もなく、伸縮自在なことももんだいですが、それだけでなく、不法目的の行為はそれだけで違法という旧態的な道徳的違法観に問題の根があるのではないでしょうか。

 

証拠隠滅教唆は教唆の正道か

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 以前大阪に住んでいた頃、近所に正道会館の本部がありましたが、その創設者による脱税および証拠偽造事件に関する最高裁の判断です。判断のポイントは、教唆といえるかという教唆概念に関わるところです。一般に、教唆犯は、教唆行為⇒教唆行為による正犯における犯罪意思の惹起⇒その意思に基づく正犯の犯罪遂行 ということがその構成要件の内容として要求されており、この事件では、教唆行為による犯罪意思の惹起があったかどうかが争われたものです。この点に関して、最高裁は、次のように判示しています。

Aは,被告人の相談相手というにとどまらず,自らも実行に深く関与することを前提に,Kの法人税法違反事件に関し,違約金条項を盛り込んだ虚偽の契約書を作出するという具体的な証拠偽造を考案し,これを被告人に積極的に提案していたものである。しかし,本件において,Aは,被告人の意向にかかわりなく本件犯罪を遂行するまでの意思を形成していたわけではないから,Aの本件証拠偽造の提案に対し,被告人がこれを承諾して提案に係る工作の実行を依頼したことによって,その提案どおりに犯罪を遂行しようというAの意思を確定させたものと認められるのであり,被告人の行為は,人に特定の犯罪を実行する決意を生じさせたものとして,教唆に当たるというべきである。

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