2007年9月アーカイブ

秘密漏示罪と必要的共犯

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 奈良県で家族3人が焼死した放火殺人事件をめぐり、中等少年院送致になった長男(17)らの供述調書を引用した本が出版され、精神鑑定を担当した京都市の医師(49)が秘密漏示容疑で奈良地検の家宅捜索を受けた問題で、医師が地検の任意の事情聴取に対し、「(著者から)頼まれたから調書を見せた」と漏洩(ろうえい)を認める供述を始めたことが22日、わかった。

 こうしたことを受け、医師も供述を変え始め、草薙氏に強く頼まれたため調書を見せたことを認めたという。
 地検は草薙氏や講談社の担当者らについても、職務で知った個人情報を漏らした秘密漏示容疑の医師の「身分なき共犯」にあたる可能性があるとみて聴取する方針。

asahi.com:鑑定医、漏洩認める 「頼まれ見せた」 調書引用 - 社会

 「漏示」といっても、公然と一方的にしゃべるわけじゃなくて、漏示の相手方が必要です。ところが、秘密漏示罪は、特定の身分のある者の漏示行為のみを処罰し、漏示を受けた者を処罰していません。いわゆる必要的共犯の対向犯に相当するのですが、一方当事者のみを処罰しています。わいせつ物等販売罪(刑175条)で、販売した者のみを処罰し、購入者を処罰していないのと同じ構造になっています。
 このような場合、通常の形態における相手方は処罰されないものと解されています。判例も、弁護士でない者に報酬を払う約束で弁護し活動を依頼したという非弁活動の禁止に関する教唆が問題となった事案で、「ある犯罪が成立するについて当然予想され、むしろそのために欠くことができない関与行為について,これを処罰する規定がない以上、これを、関与を受けた側の可罰的な行為の教唆もしくは幇助として処罰することは、原則として、法の意図しないところと解すべきである。」としています(最判昭和43年12月24日刑集22巻13号1625頁)。さらに、導入預金に関する事案でも、同様の趣旨を判示し、「通常予想される行為に止まる」行為について共犯として処罰できないとしています。

可罰的違法性

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 大阪府松原市のコンビニエンスストアの外壁にあるコンセントを無断使用し、携帯電話を充電したとして、大阪府警松原署が中学生の少年(15)ら2人を窃盗容疑で書類送検していたことが、19日わかった。
 充電時間は約15分で、電気代の被害額は1円だが、同署は「金額はわずかでも、犯罪であることに変わりはない。見て見ぬ振りをせず、法律に従って手続きをした」としている。

1円でも盗みは盗み、コンビニで携帯に無断充電の少年送検 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 こういった報道に接すると、すぐに想起するのが、一厘事件(大判明治43年10月11日刑録16輯1620頁)であろう。これは、価格1厘弱に相当する葉たばこを政府に納入しなかったという煙草専売法違反の事件である。大審院は、零細な反法行為は犯人に危険性があると認めるべき特殊の情況のもとに決行されたものにかぎって処罰すべきであるとして無罪としたのである。冒頭の想起がなされるのは、この判例をもとにして、客体の価値が僅少の場合には財物性が否定されるとする理解が一般になされているからであろう。
 しかしながら、この判例の射程範囲として、財産犯における財物の価値性一般にまでおよぶとみるべきかは、慎重でなければならない。事案が、煙草専売法という国家財政の確保を目的とする法律に関するものであり、刑法の財産罪とは異なる価値に依拠する法益が問題となっているのに加え、事案の性質からみて、政策的判断が相当程度介在している可能性があったからである。

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