可罰的違法性

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 大阪府松原市のコンビニエンスストアの外壁にあるコンセントを無断使用し、携帯電話を充電したとして、大阪府警松原署が中学生の少年(15)ら2人を窃盗容疑で書類送検していたことが、19日わかった。
 充電時間は約15分で、電気代の被害額は1円だが、同署は「金額はわずかでも、犯罪であることに変わりはない。見て見ぬ振りをせず、法律に従って手続きをした」としている。

1円でも盗みは盗み、コンビニで携帯に無断充電の少年送検 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 こういった報道に接すると、すぐに想起するのが、一厘事件(大判明治43年10月11日刑録16輯1620頁)であろう。これは、価格1厘弱に相当する葉たばこを政府に納入しなかったという煙草専売法違反の事件である。大審院は、零細な反法行為は犯人に危険性があると認めるべき特殊の情況のもとに決行されたものにかぎって処罰すべきであるとして無罪としたのである。冒頭の想起がなされるのは、この判例をもとにして、客体の価値が僅少の場合には財物性が否定されるとする理解が一般になされているからであろう。
 しかしながら、この判例の射程範囲として、財産犯における財物の価値性一般にまでおよぶとみるべきかは、慎重でなければならない。事案が、煙草専売法という国家財政の確保を目的とする法律に関するものであり、刑法の財産罪とは異なる価値に依拠する法益が問題となっているのに加え、事案の性質からみて、政策的判断が相当程度介在している可能性があったからである。

 膨大な判例・裁判例をすべて(前田雅英『可罰的違法性論の研究』(1982年)参照のこと)見渡したわけではないので、断定はできないが、客観的な時価が算定可能なものについては、かなり低額であっても財物性が肯定されているようである(例えば、価格2銭程度の石1個について、大判大正元年11月25日刑録18輯1421頁)。また、時価の算定が可能ではなくとも、価値を認めうるときには財物性を肯定しているように思われる。客観的な財産犯の財物性にとって、価値があるということは、相当な対価の提供を受けないかぎり、財産的権利を保持するに値するということを意味するといえよう。したがって、そのような対象といえるかぎり、一応は刑法的保護の対象として保護すべきものといえる。とすれば、ほとんど無価値であるもの以外は、通常、財物を肯定しうると解するのが妥当であろう。
 財物性を否定されたものみると、特急列車4本の発着時刻と英文のメモが記載されたメモ用紙1枚、ちり紙13枚、はずれ馬券、商業広告が2通在中している封筒などである。逆に、乗務役員会開催通知書1枚については財物性が肯定されている。このようにみてくると、1円相当の電気といえども、財物性を肯定するのに問題はないということになる。この事件において、むしろ重要なことは、少年らが送検されたということである。成人であれば、微罪処分に該当しそうな案件であるが、少年事件が微罪処分の対象から除外されていることによる(詳細は不明であるが、簡易送致の可能性も高い)。
# ただし、処分の公平性からみて、このような対応でよかったのかどうかは議論があろう。

 なお、マジックホン事件(昭和61年6月24日刑集40巻4号292頁)において1通話10円の通話料の免脱があったことが、可罰的違法性との関係でとりあげられることもあるが、この事件は、業務妨害罪が問われたものであり、財産侵害ではなく、業務妨害の可能性をその実質とするものであって、通話料の免脱した額は犯罪の成否直接影響をおよぼすわけではない。

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