製造行為一個説

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 某先生に、今年度は懲役刑(たしかに作業をともなうし、身柄拘束もあるし)だからといわれてますが、それを実感する今日この頃。備忘録です。以前東京高判の判批を書いたとき、一連の行為を製造行為にすればよいといったら、散々でしたが、多少賛同者はいるようです。

銀塩カメラのネガは必ず永久に残るが、デジカメのSDカードの画像は残らないのである。
 だとすると、デジカメ利用の場合は、SDカードなどの中間媒体の存否にかかわらず、犯人の意図する最終媒体の生成に至る一連の所為が一個の製造行為であり、製造罪の単純一罪となるのである。(包括一罪説には反対する)
 また、保護法益からも説明できる。
 3項製造罪(姿態とらせて製造)の趣旨が、画像の流出による法益侵害であるとすれば、製造犯人の意図は、児童ポルノであるHDDを製造することである場合に、短時間で
   撮影→SDカード→HDD
という複製過程があったとしても、SDカードが流出する危険がないから、SDカードについて独立した製造罪として評価する必要はないのである。
[From 製造行為一個説 - 奥村徹弁護士の見解(hp@okumura-tanaka-law.com)]

 ちなみに、私は包括一罪(科刑上一罪的な性質ではなく、実体法上の一罪の性質のもの)であろうと思っています。検察側からは、SDの画像が残らないとはいいきれない、といわれそうです。ところで、画像流出による法益侵害の危険って、被害児童の利益の侵害なのか、社会的法益のほうなのか、どっちなんでしょうか。

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コメント(2)

 泥縄式に都合のいい解釈を唱えているわけです。そういう大阪地裁の判決もあったので、高裁で「独自の見解」と言われることはないだろうと。

 この「3項製造罪」というのは出来の悪い構成要件でして、
  「姿態とらせて」は構成要件か?
  性犯罪・福祉犯との罪数処理
という争点で、幾らでも控訴理由が書けます。

 何言っても「失当」って言われます。
 分析的に認定して包括一罪にするのは、判例なのに。

大阪高裁H19.12.4
所論は各児童ポルノ製造罪について,携帯電話から送信メールサーバー,及び送信メールサーバーから受信メールサーバーに対する各メール送信行為は,実体としては,児童ポルノの複製行為であり,そこには,児童ポルノ製造罪の実行行為である法2条3項各号に掲げる姿態をとらせる行為が含まれていないのに,児童ポルノ製造罪の成立を肯定した原判決には,理由不備あるいは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがある,というのである。
しかしながら,原判決が,所論のいう複製行為の部分のみを取り上げて犯罪の成否を問題としているものでないことは前記1(2)でみたとおりであって,児童ポルノ製造罪の構成要件に該当する被告人の行為を具体的に特定明示して有罪とした原判決には理由不備の違法はもとより,法令適用の誤りも認められない。
所論は,本件各画像が最終的に前記メールボックスに記憶,蔵置されるまでの過程で一時的に利用された携帯電話や送信メールサーバーをそれぞれ独立した製造物ととらえる見解に立って原判決を論難するものであり,原判決とは前提を異にする独自の主張であって,失当というほかない。

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