情報ネットワークの最近のブログ記事

 スーダン出身で現在U.A.E.の内務省法律顧問をされているエルブシュラ・マゴウプさんが千葉大にて,研究のため滞在されています。その研究の報告として,イスラム圏におけるサイバー犯罪との比較を講演していただくことにしました。ふるってご参加下さい。

  • 日時 2009年3月24日(火曜日)18時から20時まで
  • 場所 北海道大学東京オフィス(サビアタワー10階)東京駅日本橋口よりすぐ
  • 講師 Mahgoub Mohamed Elamin Elbushra, Professor Dr.
      (UAE内務省顧問 兼 刑事法教授)    慶應義塾大学Ph.D. in Law(1988)
  • テーマ E-crime : definition, investigation, prosecution, trial and treatment of e-offenders
  • 使用言語 英語・日本語(通訳:石井徹哉・千葉大学教授)
  • 参加料 無料
  • 参加申込み 下記メールアドレスまで、ご氏名、ご所属を明記してお申し込み下さい。
     北大の町村先生がとりまとめられていますが,メアドをのせるとスパムの脅威にさらすことになりますので,控えます。私まで連絡をいただければ,転送します。

製造行為一個説

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 某先生に、今年度は懲役刑(たしかに作業をともなうし、身柄拘束もあるし)だからといわれてますが、それを実感する今日この頃。備忘録です。以前東京高判の判批を書いたとき、一連の行為を製造行為にすればよいといったら、散々でしたが、多少賛同者はいるようです。

銀塩カメラのネガは必ず永久に残るが、デジカメのSDカードの画像は残らないのである。
 だとすると、デジカメ利用の場合は、SDカードなどの中間媒体の存否にかかわらず、犯人の意図する最終媒体の生成に至る一連の所為が一個の製造行為であり、製造罪の単純一罪となるのである。(包括一罪説には反対する)
 また、保護法益からも説明できる。
 3項製造罪(姿態とらせて製造)の趣旨が、画像の流出による法益侵害であるとすれば、製造犯人の意図は、児童ポルノであるHDDを製造することである場合に、短時間で
   撮影→SDカード→HDD
という複製過程があったとしても、SDカードが流出する危険がないから、SDカードについて独立した製造罪として評価する必要はないのである。
[From 製造行為一個説 - 奥村徹弁護士の見解(hp@okumura-tanaka-law.com)]

 ちなみに、私は包括一罪(科刑上一罪的な性質ではなく、実体法上の一罪の性質のもの)であろうと思っています。検察側からは、SDの画像が残らないとはいいきれない、といわれそうです。ところで、画像流出による法益侵害の危険って、被害児童の利益の侵害なのか、社会的法益のほうなのか、どっちなんでしょうか。

児童ポルノ製造罪と児童淫行罪

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 最近、児童ポルノ・児童買春の論文書いてくれないので寂しいです。

奥村弁護士の見解 - 「福岡家判平成12年12月6日」の謎

 これは島戸検事への言葉なんでしょうね。そういえば、今日、12月の東京高裁の判決の評釈依頼がきました。順調にいけば9月1日発売ですね。
#一太郎ファイルであったため、開くのが大変面倒でした。σ(^_^)はWindowsになってからの一太郎は嫌いなんで使わないし、仕事の文書も最近は全部Wordですから、Wordのプラグインはいれてないし。

不正指令電磁的記録作成の件で、「故意がなければ処罰できない」の話は、「バグのあるソフトウェア」の話としてならば理解しています。

高木浩光@自宅の日記 - 「実行の用に供する目的で」の「実行」とは? その2

私はバグの話はしていません。まず、故意の問題=バグの話というのは短絡させすぎで、故意が存在しない場合の一例として、バグの話があるにすぎません(たぶん理解されていると思いますが念のため)。
次に、犯罪の成否にしても、行為の禁止(高木さんは「規範」といわれますが、「規範」といっても様々な次元のものがありますので、ここでは「法規範」あるいは「法的な禁止」に限定します)にしても、行為者の主観面を切り離して外形的な事実だけをとらえるのは、責任なき行為を禁止するもので、法規範として認めえないものになります。

日本の刑法に不正指令電磁的記録作成罪を新設することは、「そのような不正な指令を新たに存在するに至らしめることは、プログラムに対する社会の信頼を害することを意味する」という規範を、日本に作るということではないでしょうか。

「規範」という概念の使い方がちがうようですので、われわれの世界の用法にしたがって修正しますと(正確に書くと長くなるので適宜省略します)、

  • 供用目的で不正な電磁的指令を作成する行為をしてはいけないという行為規範
  • 供用目的で不正な電磁的指令を作成した者を処罰するという制裁規範ないし裁判規範
が創設されるということになります。前者の行為規範では、故意に行為する場合だけが禁止されているのです。

また作成罪はいらない?

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 熱にうなされているときに、高木さんからコメントをいただいたようです。

「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」ということが作成者の意図であることを要件とする目的犯となるように、法文を修正するべきではないでしょうか。

高木浩光@自宅の日記 - Greasemonkey利用者の感覚と不正指令電磁的記録作成罪立法者の感覚, 「実行の用に供する目的で」の「実行」とはどのような実行を..

 私の表現もまずいのでしょうが、「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」不正な指令を作成するということは、同時にその際、「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」不正な指令を作成するという故意が必要です。ここでは、故意だけでは限定が不十分であり、そのような故意をさらにこえた内心傾向が必要であるということなのでしょうか。
 供用目的をもって、客観的に「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」不正な指令を作成したけれども、そのような認識がなかった場合は処罰できないし、客観的に「人の使用する電子計算機についてその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせる」不正な指令を作成していないときにも、犯罪は成立しない、というのでは、だめなのでしょうか。

 裁判所ウェブサイトが、サイトのリニューアルに際して、http://www.courts.go.jp/outline.htmlというページで、次のように記載しました。

3. リンク設定
当サイトへのリンク設定は,原則として自由です。ただし,次の点にご留意ください。
  • リンク設定をする場合には,裁判所と特定の関係があると誤解を受けるような何らかのコメントを付加しないでください。
  • 裁判所ウェブサイトのトップページ(http://www.courts.go.jp/)へリンクを設定する場合を除き,裁判所ウェブサイトへのリンクであることを明記してください。
  • リンク設定をした場合には,次の連絡先に電話で御連絡ください。
    • 裁判所ウェブサイト内のコーナー及び最高裁判所ウェブサイト
      最高裁判所事務総局広報課 電話 03(3264)8111(内線3156)
    • そのほかの下級裁判所ウェブサイト
      それぞれの裁判所総務課

 そこで、まじめな方々は、電話連絡をされたようです。例えば、「最高裁にtelしてみた」「最高裁判所が電話してというので電話した」など。これらの方々は、http://www.courts.go.jp/というサイトのページにリンクを設定されたみたいです。

法に関する過大な期待

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 どうも。

けったいな刑法学者さんには、コンピュータ技術に関して過大な期待があるように思える。

と、酔狂人の異説さんにいわれてしまいました。でも、私はコンピュータ技術で何とかしろなどといった覚えはないし、そんなことできるとも思っていないし、と、当惑するばかりです。刃物はどんどん切れ味鋭くしてもらってかまわないです。ようは、使い方を間違わなければいいんです。で、変な使い方をして、人に迷惑をかけたり、傷つけたりしたら、それなりの責任をとってもらわないといけないだけです。

 むしろ疑問なのは、

コンピュータは刃物のようなものである。刃物をうかつに扱えば他人や自分を傷つける。だからといって、他人や自分を傷つけないように切れなくすれば刃物としての用をなさなくなる。コンピュータを切れない刃物にすればいいというのは、使い物にならなくすればいいと言っているに等しい。遠回りのようでも、リテラシーを高めていく以外に本質的な改善は望めない。

という言葉を裏返せば、なんか法に過大な期待か、あるいは、極端な見方があるようにに思います。

続々・作成罪はいらいない?

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 「続・作成罪はいらいない その2」を書かれて、さらに議論をすすめられたようなので、こちらもさらにすすめます。
 その前に、余談から。偽造罪って「にせもの」を作ることなのは確かなのですが、「にせもの」っていろいろ考えることができます。現行刑法は、名義の真正性に対する信頼を保護するものとして偽造罪をおいており、その意味で、名義の真正性を偽ること=有形偽造の処罰を原則としています。内容の真実性を偽ること=無形偽造は、とくにその信頼を保護すべき場合にかぎって、例外的に処罰しているにすぎません。この点で、作成名義を偽ったものを「にせもの」というのがこれまでの話だったといえます。なお、電磁的記録不正作出罪になりますと、有形偽造だけでなく、無形偽造も処罰されると解するのが多数説です(公文書と公電磁的記録の整合性が主な理由です)。
 話を不正指令電磁的記録に関する罪にもどしますと、高木さんと法案(ないし立法者)との相違点は、信頼の対象が異なっていることにあり、

「プログラムの動作に対する信頼」と、「プログラムを供用されることに対する信頼」とは別であり、「プログラムを供用されることに対する信頼」が求められているのだと考えます。

ということから、それが「作成罪」不要とされる考えに結びつけられています。

続・「作成罪」はいらない?

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 この法案の問題点が浮き上がってきそうなのですが、私の誤解か、高木さんの誤解か、あるいは、そこが論点なのか、確認したいことがあります。

(1) 論点1および論点2に関連して

 その前に、これは、ここだけでなく、全般的に使われている表現なのですが、

コンピュータプログラムの不正な作成を罪とすること

を問題視されています。ただ、法案は、不正なコンピュータプログラムの作成を罪とするものなのです。「不正」の意味は、ひとまずおくとして、「コンピュータプログラムの不正な作成」と「不正なコンピュータプログラムの作成」というのは同じなのでしょうか。偽造罪との対比がわかりやすいということで、若干ミスリーディングだったのかもしれませんが、不正電磁的記録作成罪では、「不正な電磁的記録」の作成が処罰の対象であるという理解をすべきではないかと思います。解釈した結果、電磁的記録の不正な作成と同義だ、ということはあるかもしれませんが、議論の前提としては区別しておきます。

 上記タイトルは、別にクレジットカードの偽造にかぎるわけでなく、「通貨偽造罪」に「偽造罪」はいらない、「文書偽造罪」に「偽造罪」はいらない、「電磁的記録不正作出罪」はいらない、といいかえても、いいのです。「『不正指令電磁的記録に関する罪』に『作成罪』はいらないのではないか」というエントリでは、「作者に責任がある」という短絡的思考が看取され、あるいは、

作成者と供用者が申し合わせて行為に及んでいるなら、それは共謀共同正犯になるし、作成者が供用者のことを知らなくとも、誰かが行為に及ぶだろうと考えながらプログラムを作成したならば、作成者の行為は幇助にあたるのではないか。

として、供用罪の共犯による処罰でカバーされるから、作成罪はいらないとされています。

# 作成者が供用者のことを知らなくとも、誰かが行為におよぶだろうということをよく従犯の故意として、こういった場面で用いられたりしていますが、きわめて誤解を生む表現であるか、あるいは、誤解している表現です。Winnyを例にあげていますが、おそらくWinnyのケースでもそのような漠然としたものを故意としているわけではないはずです。強力な時限爆弾を銀座四丁目の交番に仕掛けて交差点周辺の人々を殺害する場合と同程度の内容はあったとみているはずです。

## ついでに、

幇助で起訴するとなると作成者の意図を立証する必要があり、それが難しいから……ということは理解できる。しかし、今回の刑法改正案でも、「人の電子計算機における実行の用に供する目的で」と限定しているのだから、作成罪に問う場合はいずれにせよ、「人の電子計算機における実行の用に供する目的」という意図があったことを立証しなくてはならない。

意図、目的、故意は、概念的に異なります。事実上、重なり合うことがあるというのと、概念の異同は一応区別されます。また、意図の立証が難しいから、このような立法になったわけではないです。

最近のブログ記事(続々・けったいな刑法学者のメモ(補訂版))

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