郵政民営化の政局の余波で、衆議院の法務委員会が事実上審議停止状態になってしまい、共謀罪を含む刑法・刑訴改正案はこのまま会期末を迎えそうです。政治のことはよくわかりませんが、衆議院解散ともなれば廃案です。もしかすると、会期末で審議未了のまま廃案になるかもしれません。
昨日会合で話題にあがったとき、共謀罪の適否を考える場合、たんに実体法上の要件の妥当性を問題にしても不十分ではないかということを指摘されました。たしかに20世紀にアメリカ刑法で共謀罪が問題とされたとき、大きく二つの時期に分けて考えることができます。一つは、20世紀前半における議論で、一般的な共謀罪の要件が煮詰められていったときです。二つめは、RICO法において新たに共謀罪が制定法上の犯罪として規定されたときです。
現在わが国の共謀罪立法は、組織犯罪対策の一環としてその犯罪化を議論しています。ということは、アメリカ法における共謀罪を比較法的に検討する際も、伝統的な共謀罪との関係をみるのは不十分であり、むしろRICO法における共謀罪の規制を検討することが必要です。そうすると、RICO法それ自体の立法事実やそこにおいて導入された法制度の枠組みなども含めて総合的に検討しなければ十分ではないでしょう。
とくに会合で指摘されたのは、刑事免責に基づく証言が共謀罪との関係では重要ではないかというものでした。外形的行為がなくとも、組織的な共謀(法案はもっと具体的ですが)だけで犯罪の成立が可能であるとしても、その刑事的介入の契機として組織内部の者の証言は重要な意味を持つことになります。まったくの推測で実態は異なるのかもしれませんが、もしアメリカのRICO法における共謀罪が適切に適用されているのであれば、実はこの内部者による証言が立証において重要な役割を果たしており、なんか変なことをたくらんでいるかもしれないとの不安定な外形的危惧による介入を阻止できているのかもしれません。
さらにRICO法では、使用・派生免責を導入しており、この点との関連性も考えるべきかもしれません。さらにいえば、わが国の公益通報者保護法とは比べものにならない証人保護制度の存在も含めて検討すべきかもしれません。
#このあたりは門外漢ですから、今後の研究のヒントあるいは種みたいなものでしかありません。実はそうではないかもしれないです。それでも、こういったこともふくめて検討しないと不十分ではないかと思いますし、審議会での議論、あるいは、(外形的行為が不要とする)担当者の説明も、そういう深みのあるものではないため、あまり説得的ではないと感じられるのです。
没収弁護人も困りました。
ローの仕事で忙しく、仕事が全然進みません。気がついたら1ヶ月もブログもかんかったとです。あと1週ローがあります。なんとか乗り切って執筆を再開しなければと思っています。過失犯の方は順調に進んでいますか?Feindstrafrechtについては序論において少し詳しく触れるつもりです。共謀罪とか臓器移植法改正案などはどうなるのでしょうか。こっちはあまり情報も入ってこないので、なにかあったら教えて下さい。
臓器移植法は、公明党関係がまた修正案を用意しているようですね。気づいたら、学内行政の波に飲み込まれていました。過失犯は、考えていくうちに、Jakobs説になってしまいそうです。ひとまずは、井田教科書とロクシン説への批判だけまとめる予定です。