児童ポルノの製造の意義に関する最高裁の判断です。
法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たると解すべきである
この決定の射程範囲として、「児童ポルノのダビングも犯罪だ」というのは誤りでしょう。「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した」者であるからこそ、まさにそのような姿態をとらせて作成した記録を複製したことについて、製造罪が成立したということです。名古屋高裁だけが違う判断をしたということで、これまでの判例とちがうというのが弁護人の主張であったなら、なぜ最高裁が、所論引用の判例が事案を異にしているとして却下したのかということをよく考えるべきではないでしょうか。
この最高裁の射程として、別人格の者による複製行為が製造となるとまで読むのは判例の理解としておかしいなものです。むしろこの最高裁の判断についていえば、最初の製造行為とその後の複製行為に時間的(場合によっては、場所的)接着性はいらないのかということではないでしょうか。もしそれが一切不要というのであれば、それなら別人格の者が複製した場合も含めてよいだろうということになり、まさに弁護人の主張が意味をもってくるのでしょう。ただ、そこまで無制約にしているわけではなく、本件事案の場合には、これを肯定してよいという程度にみておくのがむしろ適切であろうといえます。
コメントありがとうございました。
撮影行為とダビングの犯罪性についてはこう考えています。
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20060223/1140671258
撮影後のダビングについては、ダビングごとに別罪と考えて、時間的接着性あれば包括一罪とするというのが、判例であり、常識的なところです。
ダビングまで含めた製造罪の罪数については、撮影行為を基準にするのか、生成された物の個数を基準にするのかは一定していません。
販売用に大量に複製する行為が製造罪でめったに検挙されないのを疑問に思っています。
ご趣旨はわかりますが、条文の文言から、そこまで射程範囲に含めようというのは、無理なところがあると思います。
7条3項に、たんなる複製を含めると、単純所持事案で、バックアップ用に複製した場合も、製造罪となり、単純所持を処罰しないという現行法の趣旨を否定することになります。
販売用に大量複製した場合、販売目的所持罪で対応するということは可能で、処罰の隙間はそれほど生じないと思います。
きょう、ポルノに製造した。
「理由は買って読め。」ということでしょうか?
「3項製造罪は身分犯と読め」とされています。
刑集にも出るそうなので、あとは学者先生に任せます。
判例時報1923判例タイムズ1206
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律二条三項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為と同法七条三項の児童ポルノ製造罪の成否 最高裁H18.2.20