ワームの作成と配布

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 Sasserというワームを開発した少年に対する裁判所の判断がでていました。ドイツ語のニュースから。これによると、4件のデータ変更(Datenveräderung)と3件のコンピュータサボタージュ(Computersabotage)で有罪とされ、保護観察(執行猶予)のついた1年9月の少年刑(Jugendstrafe)が言い渡され、さらに30時間の社会奉仕活動(病院もしくは老人ホームでの福祉作業)を命ぜられたそうです。

 ちなみに、ドイツ刑法では、ComputersabotageとDatenveränderungは器物損壊罪の特別類型の位置に規定されています。

§ 303a. Datenveränderung.
(1) Wer rechtswidrig Daten (§ 202a Abs. 2) löscht, unterdrückt, unbrauchbar macht oder verändert, wird mit Freiheitsstrafe bis zu zwei Jahren oder mit Geldstrafe bestraft.
(2) Der Versuch ist strafbar.
§ 303b. Computersabotage.
(1) Wer eine Datenverarbeitung, die für einen fremden Betrieb, ein fremdes Unternehmen oder eine Behörde von wesentlicher Bedeutung ist, dadurch stört, daß er
1. eine Tat nach § 303a Abs. 1 begeht oder
2. eine Datenverarbeitungsanlage oder einen Datenträger zerstört, beschädigt, unbrauchbar macht, beseitigt oder verändert,
wird mit Freiheitsstrafe bis zu fünf Jahren oder mit Geldstrafe bestraft.
(2) Der Versuch ist strafbar.

 記事によると、その犯行は少年にありがちな態度を示すもので、愉快犯的なものだったとされているようです。18歳の犯行当時、クラスで浮いた存在で、いじめられていたこと、NetskyとSasserをプログラミングしたとき、ちゃんと認めてもらいということから行為したとか。少年犯罪の類型の一つのようですね。コンピュータ会社で教育を受けると十分な結果を得られるだろうともされています。アメリカだったら、二度とコンピュータにさわってはいけませんとかって、判示するのですよね。このあたりが、敵対的刑法ばりばりのアメリカとの違いかもしれません。

 ちなみにドイツのウイルス関連の状況については、ちょっと古いですが、ドイツにおける有害プログラムの刑事的規制があります。日本の場合は、まだ解釈論的に詰めていないところも多いように思います。それに、電子計算機損壊等業務妨害罪と電磁的記録損壊罪とまったく別のところに規定されていますし、器物損壊罪における機能的な損壊概念において、コンピュータの機能的損壊とはどのようなものなのかなんて、誰も考えていないでしょう。

# 少年刑は、少年刑務所における自由刑ですから(§17I JGG)、禁錮といってもよいのでしょうが、1年9ヶ月の保護観察処分というのは明らかに誤りでしょう。あと、Veränderungを改竄とするのは、§303a StGBの規定内容からみて狭すぎです。

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