2006年2月アーカイブ

 児童ポルノの製造の意義に関する最高裁の判断です。

法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した者が,当該電磁的記録を別の記録媒体に記憶させて児童ポルノを製造する行為は,法7条3項の児童ポルノ製造罪に当たると解すべきである

 この決定の射程範囲として、「児童ポルノのダビングも犯罪だ」というのは誤りでしょう。「法2条3項各号のいずれかに掲げる姿態を児童にとらせ,これを電磁的記録に係る記録媒体に記録した」者であるからこそ、まさにそのような姿態をとらせて作成した記録を複製したことについて、製造罪が成立したということです。名古屋高裁だけが違う判断をしたということで、これまでの判例とちがうというのが弁護人の主張であったなら、なぜ最高裁が、所論引用の判例が事案を異にしているとして却下したのかということをよく考えるべきではないでしょうか。
 この最高裁の射程として、別人格の者による複製行為が製造となるとまで読むのは判例の理解としておかしいなものです。むしろこの最高裁の判断についていえば、最初の製造行為とその後の複製行為に時間的(場合によっては、場所的)接着性はいらないのかということではないでしょうか。もしそれが一切不要というのであれば、それなら別人格の者が複製した場合も含めてよいだろうということになり、まさに弁護人の主張が意味をもってくるのでしょう。ただ、そこまで無制約にしているわけではなく、本件事案の場合には、これを肯定してよいという程度にみておくのがむしろ適切であろうといえます。