検視

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搬送中、犬山署に「労働災害の可能性あり。不審死の疑い」と連絡した。

 病院は脳に異常がみられず、心臓が肥大していたことなどから急性心不全と診断した。犬山署の事情聴取に、前時津風親方や兄弟子らは「激しいぶつかりげいこで倒れた」と説明。遺体の目視や診断した医師らからの聴取などから、同署は病死と判断し、県警本部に検視官の出動を要請せず、死体取扱規則に基づく死体見分調書しか作成していなかった。

asahi.com:力士急死で検視怠る 愛知県警、病死と判断 - 社会


 一連の問題は次の言葉に集約されている。


解剖の前に犯罪性がわかってしまうような運営がそもそも前近代的なのだ。この点を改めなければ、いつまでたっても同じミスが発生する。

一般の方にはわかりにくくしてある - 法医学者の悩み事 - Yahoo!ブログ

 刑訴法229条が変死またはその疑いがある場合に、検視を義務づけ、捜査の端緒とするようにしている趣旨を完全に没却しているのが、今回の事件である。さらにいえば、変死の死因を医学的に追求しないというのは、やはり法の精神に反するのではなかろうか。最高裁は異常死体の届出義務に関して医師については厳しくこれを要求するのに、捜査機関に対してはそれほど強く要求しないのであろうか。
 ただ、この現状は、日本では遺族が死体を解剖されたくないと切望することが多いことによって、このように運用されてきたということもいえる。人によっては、あとから医療過誤死を主張するのに、死亡時には病理解剖すら拒否するのである。

# この事件の遺族は、みずから解剖することによって、多少なりとも(細かな経緯はなお明らかになっていない)事案の真相を明るみにすることができた。おかしいと思ったら解剖を、ということなのだろう。


 さらに、解剖があまりされてこなかったという事実は解剖に対する予算措置がなされず、予算に配慮した運用へといたり、現場でお金のかかる解剖をさけようとする方向になっていたのかもしれない。
 ただし、これらは推測にすぎず、実態はなお明らかでない。いずれにしても、このままでは不幸は繰り返されるだけである。


 この事件はまだ関係者の検挙にいたっていないが、実は初動捜査の失敗=解剖しなかったことが事件の立件を困難にしたのではないだろうか。杞憂であればよいが。

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コメント(1)

堀田元検事が食糧難の時代なのに
ピアノを引いている女性に、
恋をしたとかいっていましたね。
しかし、
人間、耳悪くなると、
人生にゆとりがなくなると、
どうもピアノなんですよね。
そー思います。
赤色革命とか全面戦争とか、
そういう時代の楽器ですからね。

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